酔眼読書漂流記

読んだ本の紹介と感想などを、酒を片手にゴソゴソと綴っております

首折り男のための協奏曲/伊坂幸太郎

久しぶりの伊坂幸太郎作品です。もともとは、バラバラに発表された7つの短編。それが一冊にまとまり、並べてみると、あら不思議。連作短編集として仕上がっています。どれも独立したお話なんですが、微妙にリンクして、全体でひとつの物語を紡ぎだす。このさりげない繋がり具合が、実に憎い。これぞ伊坂幸太郎の真骨頂ですね。最初に読み終えた時でも、それは十分に味わえます。しかし、二度三度と読み返していくたびに新たな発見がある。「ああ、ここはそういう意味だったのか!」と、読んでいてニヤニヤしてしまいます。ほんと、上手いなぁ。

首折り男の周辺

隣人が殺人事件の犯人じゃないかと疑う老夫婦。他人に間違えられて妙な事件に巻き込まれる男。学校でいじめに遭う少年。無関係な出来事が交差した先に訪れる結末の小気味よさ。最後のセリフにアレをもってくるとは、鳥肌が立ちましたよ。

濡れ衣の話

3年前に息子を交通事故でなくした父親。偶然出会った加害者を殺害してしまう。その後現れた刑事と事件について語っていくと、思いがけない事実が。人は、やはり独りで生きているのではない、ということ。自分の存在は、誰かに少なからず影響を与えるのです。

僕の舟

伊坂作品でおなじみの黒澤が登場。そして、第一話の老夫婦が再度登場。50年前に、たった4日間だけ付き合った思い出の人を捜してほしいという夫人の依頼に応える黒澤と、その顛末。人生の選択は、果たして正しかったのだろうか、なんてことを振り返ると思ってしまうわけです。でも、やはり選んだ道が正しいんだよなぁ、と思わせるロマンチックで心温まる一編。「僕の舟」の意味がまたいいですね。

人間らしく

黒澤の知人でクワガタのブリーダーをしている窪田。黒澤に、虐げられている妹のために、彼女の夫の不倫の証拠を押さえてほしいと依頼する女。そして、塾でいじめに遭っている少年。人の争いや罪悪とは何か。そんなことを考えさせられる一編。神や仏はいるのか。それは自分の中にある、んでしょうかね?

月曜日から逃げろ

黒澤の裏の顔を知るテレビ番組の制作プロダクションの男から、無理な依頼をされて…。この中では一番トリッキーで一押しな一編。さりげない伏線の意味が、わかった時の爽快感は相変わらず素晴らしい。「答え」がちゃんと作中で提示されているですよね。それをわかった上でもう一度読むと…。

相談役の話

これは、そのオチにびっくりしました。そんな話に回収するのかって。掲載誌を見れば…、そうなんですよね。

合コンの話

6人の男女の合コンでのお話。どこにでもあるような合コンの話が、読み進めて行くうちに思いもよらない結末が待ち構えています。「ここはアレで、これはあそこか!」って、ぜったいにニヤニヤしちゃいますって。この話で「協奏曲」が完成するのです。ただ、これはいろいろな文体で書くという実験的なことをされているので、読みやすいかというとどうでしょうね。

まとめ

全体を通して読んで思うのは、天の配剤というものはあるのか、ということ。運命は「神」の存在が介入してきて決まるのか。いや、そんなことはない。自分の選択が正しいのです。そんなことを思いつつ、決して明るいトーンの話ばかりじゃなくとも、前向きな気持ちにさせてくれるのが伊坂幸太郎ではないでしょうか。

首折り男のための協奏曲

首折り男のための協奏曲