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酔眼読書漂流記

読んだ本の紹介と感想などを、酒を片手にゴソゴソと綴っております

怪しい店/有栖川有栖

有栖川有栖

「店」を題材に火村とアリスのコンビが活躍する短編五編。

古物の魔

骨董品屋の店主が殺害される事件。この事件で興味を引くのはアリバイについてである。ああ、そういう使い方もあるのかと感心する。そして、モノの価値というものも考えさせられる。某番組の影響か、骨董品=お宝というイメージがある。しかし、それは誰にとっての宝なのか。それによって価値、すなわち値段、も変わってくる。定価の無いものを買うということは、自分自身の価値観との対話なのかな、と思ってみたり。アリスではないが、今まで興味のなかった骨董市にでも足を向けたくなる。

燈火堂の奇禍

古本屋が舞台。立ち寄った古本屋で、主人が万引き犯に突き飛ばされて怪我を追ったという話をアリスが聞く。何気ないその話から、実際にあったことを火村は見抜く。自分の推理をシャーロック・ホームズを引き合いに出してまとめているが、まさにその雰囲気。余談になるが、ホームズの面白さは妄想の面白さなんだと思う。小さなデータから思いもよらない話を膨らませる面白さ。そんな一編。

ショーウィンドウを砕く

到叙形式の一編。犯人の挑む完全犯罪を、どんなところから火村が暴くのか。火村の仕掛けた罠は、さすが名探偵と唸らせられる。動かぬ証拠にお見事。もっともきわどい賭けのような気もするけど。何よりもこの短編の一番の肝は、最後の一節だろう。犯人の火村に対する独白にドキリとさせられる。それは案外間違いかじゃないかもしれない、と思わせるからだ。

潮騒理髪店

日常の謎系。タイトルが素敵。これだけでなんとなく情景が浮かんでくる。旅先で訪れた理髪店での出来事。ここで火村が示す解は、あくまでも可能性だけ。しかし、そんなことはいいのである。潮騒の音を聞きながら散髪してもらう、なんてのはどれほど気持ちがいいことだろうか。アリスじゃないけど、そんな店との出会いを求めて髪を伸ばしたまま旅に出たくなる。

怪しい店

相手の話を聞くだけ、と言う風変わりな店「みみや」での殺人。この中ではいまひとつすっきりない一編。というのも火村の推理も歯切れが悪く感じるからだ。そう、それは憶測に過ぎない。何よりも、犯人が誰かわかっていないという。 ここでのポイントはアリスとコマチさんの語る火村像か。なぜか彼は犯罪者を狩り立てるのか。しがらみなく問うことができるのは、案外コマチさんなのかもしれない。

怪しい店

怪しい店