酔眼読書漂流記

読んだ本の紹介と感想などを、酒を片手にゴソゴソと綴っております

笑う警官/マイ・シューヴァル、ペール・ヴァールー

これは面白い。名探偵が登場して謎を解くのではなく、刑事ドラマです。頭脳よりも足で解決するって感じでしょうか。マルティン・ベックをはじめとした個性豊かな刑事達の動きが見事に描かれています。

はじめて読むのにしっかりと各キャラクター達に感情移入できちゃうのは流石。舞台がなじみの薄いスウェーデンというのもなんだか異国情緒を醸し出していていい感じです。

それに何より謎解きの面白さにあふれています。軽機関銃で8人もの乗客を殺した犯人は誰なのか。その目的はなんなのか。そして部下の刑事はなぜ事件に巻き込まれたのか。

刑事達の地道な(それでいて飽きさせない)捜査によって謎が少しずつ解けていくのを読むのは、これぞミステリの醍醐味、でしょうね。

そして「笑う警官」というタイトルに込められた意味。読み終えたときにそれは明かされます。もうラストシーンにクラクラきちゃいました。もうこのラストシーンを読むだけでも価値があるかも。ある意味"衝撃的”なラストなんです。ああ、これが刑事稼業って事なんだろうなぁ、となんだかしみじみとさせられたラスト1行でした。

三つの棺/ジョン・ディクスン・カー

やはりカーは凄い、と思わせるのに十分な一作。トリックに対するパワーが圧倒的。たとえ少々強引な力技でも、不可能状況を成立させてしまうのはお見事というしかない。ミステリ好きにはたまらない、読んでワクワクさせてくれる。

本作には密室からの人間消失と、そだけでも歯ごたえ十分なのにもうひとつ不可能状況を用意してくれている。二人の人間がほぼ同時刻に別の場所で撃たれるのだが、その凶器は同じ銃なのだ。しかも、通りの真ん中での犯行にも関わらず目撃証言は犯人の声だけで、その姿を見ていない!

この謎に対するフェル博士の推理はお見事。判ってしまえば至極簡単なことなのだ。逆にだからこそ凄い凄い。もっと凄いのは、真相がわかって改めて読み返してみれば、実は最初からはっきりと答えが書かれていたんだよね、ってとこ。あー、感動の嵐。 もう一度言おう、やっぱカーは凄いわ。

史上名高い〈密室講義〉もこれに収録されてます。 未読の人には一読の価値あり。

本陣殺人事件/横溝正史

記念すべき金田一耕助デビュー作

そして国産の、というより密室トリックの白眉といって過言ではない作品。そこから醸し出される雰囲気が素晴らしい。物語の中にしっかりと溶け込んでいるのだ。まさに純和風。

事件当夜に鳴り響く琴の音色のシーンの恐ろしさ。実際に真夜中に聞けばそれはもう腰を抜かしますって。でも単に恐ろしいだけではないのだ。恐ろしくも美しいのだ。これは横溝作品のひとつの特徴だと思うのだが。なんと言ってもこのトリックが発動される様を想像するとその美しさに身震いするぞ。

また、犯人はなぜ密室にしたという理由も納得できるもの。その辺の処理の仕方はうまいと思うなぁ。時々、理由もなくトリックのためだけに密室が出てくる作品ってのに出くわすときもあるからね。まぁ、それはそれなんだけど。様々に張り巡らされた伏線が金田一耕助によって収束していく様も圧巻。何はともあれご一読を。古典ではあるけど、今読んでも新鮮だと思うぞ。