酔眼読書漂流記

読んだ本の紹介と感想などを、酒を片手にゴソゴソと綴っております

王城の護衛者/司馬遼太郎

純情一途な男の生きざまー

先日、NHK大河ドラマの「花神」総集編を見てから、司馬熱が上がる。前から気になっていた「鬼謀の人」と「英雄児」が収録されている本書を読むことに。それぞれ大河ドラマの原作「花神」と「峠」の元になった短編小説。

ダイジェスト版、と言ってしまえば身も蓋もないが、「花神」「峠」を読んでいれば十分というのも確か。しかし、今手元にその二つがないので、久しぶりに蔵六と継之助に会えたようで嬉しい。

表題作の「王城の護衛者」は会津藩主松平容保の話である。幕末、治安回復のため京都の守護職に命じられたことで、歴史に一方の主役として脚光を浴びることになる。それは朝敵逆賊の敵役として。容保自身その運命を予見していたのだが、「一藩の賭してでも将軍家のために危機におもむくべし」という家訓のため、やむなく守護職を受けたのだった。

司馬遼太郎は容保を「純情」と表現している。薩長が暗躍しているこの京都において、彼は政治的な駆け引きを一切せず己の誠を示せば事は解決するはずだと信ずる註1。そして、帝に対する敬愛の情もそうであろう。それは少年の持つ「純情」である。時代は過酷である。やがて容保と会津藩はその純情さ故か、時勢から取り残され滅亡の道へと進む。しかし、危なっかしさの中に見せるその一途な思いが、容保の魅力となって読むこちらも知らず彼を愛さずにいられなくなる。

他に「加茂の水」と「人斬り以蔵」を収録。